日本各地の染・織物
染め織り用語解説
☆優佳良(ゆーから)織
羊毛を素材にしたユニークな北海道の織物。旭川市の木内綾さんが研
究、試作を重ね、三五年前から織り出した。多彩な色糸を使い、まるで
絵画を想わせるような柄を表現するのが特徴。たとえば「流氷」「ナナ
カマド」「ハマナス」「摩周湖」など、北海道の白然が織り出されているの
が魅力、と人気も高い。北海遣の風土に根ざした新しい伝統織物、とい
う風格が感じられるほどだ。
☆裂織(さきおり)
素朴だが、多彩な色糸を使った縞柄の織物。多彩になるのは、経糸に
木綿糸や絹糸を使い、古布を裂いて糸状にし、緯糸として織り込むから
だ。古くなった着物の再生織物だが、かっては労働着や漁師の防寒用半纏
などに使われた。いまでも青森県の十和田町、八戸市、弘前市などで織
られているが、色使いが大胆で驚かされる。趣味の着物や半纏、バッグ、
小物など、使い方もさまざまだ。
☆白石紙布(しろいししふ)
和紙を原料とした世界でも珍しい織物。富城県白石市で織られている
白石紙布は、江戸初期からはじまり、武士の祥などに使われてきた。
楮(こうぞ)の繊維で漉いた和紙を、まず幅2〜3ミリの短冊形に裁断。これを
よく操み、細い糸をつくる。織りは絹糸や木綿糸を経糸にし、和紙の糸
を緯に織り込んでいく。糸を藍などの植物で染め、縞柄を織り出したも
のが多い。ほかに白生地を織り、小紋の型染をしたものもあるが、いず
れも素朴な味わいを持つ。
☆川俣紫根染(かわまたしこんぞめ)
紫草の根で染めるやさしい紫色。万葉の時代から行なわれていた紫根
染だが、きれいな紫を発色させるのはむずかしいし、手間もかかる。い
までは紫草が減少したこともあって、紫根染の伝統を守る人は少ない。だ
が、福島県川俣町の山根正平氏は、200年前に途絶えた川俣紫を復興
し、伝統の紫を染めつづけている。川俣絹を使い、紫根のほか、藍や茜、
樋子(くちなし)、桜、梅などの植物で染めた色糸を混ぜて縞や格子を織り出すが、
その色調は優美である。
☆会津木綿
縞柄の木綿織物で、福島県会津地方で織られている。この地域は、古く
から藍と木綿の栽培が盛んなところで、会津木綿は寛水年間(1624-44)ごろ、
武士の妻たちの内職としてはじまった。紺地に白など
すっきりした縞柄が多いのも、それゆえのことかもしれない。
☆益子草木染
栃木県益子町で産する染織品。益子町では江戸後期から木綿織物が盛
んだったが、明治末期に衰退した。戦後、日下田博氏が藍染の木綿織
物を復興。現在は八七歳の博氏が染、子思の正氏が織を分担し、綿の栽培
から手紡ぎで糸をつくり、糸染、手織りと一貫して行なっている。藍染
が主体だが、ほかに茜や蘇芳など植物染料を使い、やわらかな色調を生
み出す。木綿のほか、絹や羊毛も使っている皿着尺地は少なく、暖簾、
テーブルセンター、タペストリー、小物などが多い。
☆結城紬
江戸時代からつづく代表的な綿茨城県結城市、栃木県小山市で織ら
れている。真綿から指先で糸を紡ぎ、緋柄にしたがって糸のところどころ
を括り、染める。これを手機にかけて丹念に織っていく。結城紬の特徴
は細かい絣柄にあるが、基本は亀甲絣と蚊絣。細かい絣柄でさらに草花
模様などを構成するのだから、その苦労や手間はたいへんなものだ。色
調は紺や浅葱、緑など多彩だが落ち着いた趣きがある。伝統の味を
持つ紬の本格派である。
☆長坂中形(ながいたちゅうがた)
浴衣に使われる藍染の粋な染物で、東京都、埼玉県草加市などが主産地。
草花や蝶など絵画的な模様が多く、江戸時代から盛んに染められてきた。
白木綿を長板の上に張りのばし、型紙で防染の糊をつけてから藍嚢に浸
して染める。藍と自の爽やかな調和の染味は、涼感を誘う。手染の伝統
的な染物で、高級品となったが、本格派を好む人に愛用されている。
☆館山唐桟(たてやまとうざん)
江戸時代、通人たちは南蛮船が運んできた縞木綿を「唐桟」と呼び、
羽織や着物にして愛用した。明治後期、斎藤茂助氏(故人)がそれらを。
手本に織りはじめたのが館山唐桟。いまも千葉県館山市でつづいている。
細い木綿糸をさまざまな植物染科で染め、伝統の粋な縞柄を織り出す。
藍を基調に、茶や黄、赤、赤茶、水色、鼠などを使うが、その配色は絶
妙で、新鮮な美しさがある。
☆江戸小紋(えどこもん)
紺や茶、古代紫、朱など洗練された渋い地色に、細微な模様を白抜き
した伝統的な型染。主産地は東京都。江戸小紋はもともと江戸時代・
武士の染柄として発達したが、やがて町人文化の隆盛とともに庶民にも
普及した。遠目には無地に見えるが近づいてみると、小桜や梅、松、鮫、
麻の葉などさまざまな模様がわかる。単純な点が巧みにつらなり、多様な
美を生み出す。そうした型染の美しさが江戸小紋の魅力だ。
☆黄八丈(きはちじょう)
東京都八丈島で織られている絹織物。約500年の歴史をもつが、江
戸前期には御殿女中や医師、裕福な商人など限られた人びとに愛用され、
江戸後期には粋な着物として庶民も着るようになった。艶やかな黄色、
渋い樺色、漆のような黒を組み合わせた縞や格子柄の美しさは、賛八丈
だけがもつ独特の魅力だ。黄色の染科は島に自生する八丈刈安(かりやす)を
煮てつくるが、樺色はマグミ(タブノキ)の生皮、黒は椎の乾燥した樹皮を使
う。黒はさらに泥染をして艶を出す。黄八丈は、八丈島の自然と人びとの
知恵とが生み出した伝統的な織物なのである。
☆ざんざん織
紬の一種だが、ウールのよラな感触に特長がある。それというのも、
経糸と緯糸のいずれも特別の太い玉糸を徹底して精練し、艶のあるしな
やかな糸にして使っているからだ。したがって、ざざんざ織は単衣で着る。
昭和初期、静岡県浜松市の平松実氏(故人)がはじめた織物で、そ
の技法はいまも生きつづけている、糸染は山桃など植物染料
で染め、手機で縞柄を織る。多様な茶系の色や赤、藍色などを巧みに配
列し、渋い美しさを生盆す百着物や帯のはか、コート、ネクタイなど
用途は広い。
☆有松鳴海絞(ありまつなるみしぼり)
名古屋市緑区で染められ手ている絞り染め慶長年間(1596−1615)
手拭に藍染めの豆絞りをし東海道を往来する旅人に売ったのがはじ
まり。その後、技法が多様化し、多くの絞り方が考案された。自生地に
筋ひだをつけ、縄芯に巻き付けて染める手筋絞は、数十本の筋目が浮き
上がった絞り模様となる。技法は百数十を数えるが、それらを使いわけ、一
多様な絞り染の美しさを生み出す。現在では華麗な振袖や訪問着などの
ほか、ネクタイまでつくられている。
☆郡上紬(ぐじょうつむぎ)
斬新な色使いと風合のよさで定評のある椀紬。岐阜県郡上郡八幡町で織
られている。この地域には、江戸時代から野蚕糸を紡ぎ、植物染料で糸
染した郡上織があったものの、いつしか途絶えた。戦後、宗廣力三氏
,故人)がその伝統を再興しようと、郡上紬を織りはじめた。玉糸や手紡
つむぎ糸を植物染料で染め、手織りするのが特徴。縞、格子、絣のほか幾何
文様もあり、いずれも色糸の配列が絶妙で、独自の風格を感じさせる。
☆牛首紬(うしくびつむぎ)
白山の翼石川県自峰村牛首で織られている紬。丈夫なうえに地風が
さらっとして、上品な味がある。紬といっても真綿から糸を紡ぐのでは
なく玉まう繭(複数の蚕がつくった繭)から座繰した糸を使い、手織りする
のが特徴。座繰というのは簡単な遣具を用い、手で把手をまわしながら
度に数個の繭から糸をひき、一本、の糸にしていくことだ凸江戸中期か
らつづく白紬は名産として有名。近年では植物染料で糸を染め、縞や緋
も織っている。色調には、やさしい美しさがある。
☆近江上布(おうみじょうふ)
近江の麻織物は庶民の日常着として始まったが、江戸時代には商品化
し、各地に流通した。滋賀県愛知川町が産地。近年では、ラミー糸(紡
績苧麻糸)や他の糸を併用し、洋服地をつくっているところが多いが、
伝統的な近江上布も健在だ。草花文や幾何文などの絣柄が中心で、女物
の夏着尺地となる。
☆京友禅
歴史は古く、元禄年間(1688-1704)、京都の扇面絵師、宮崎友禅が
デザインし、職人が染めたのが始まり。その後、絞り染や描き
絵、更紗染など多様な染色技術総合化し、享保年間(1716−26)
に完成した。手描友禅、型友禅などの種類がある。模様は花鳥などさま
ざまだが、華麗な美しさを生み出す。絵画的で多彩な模様染で、日本の着
物の代名詞ともなっている。
☆京 鹿の子絞り
京都で染められる伝統的な手絞り染。鹿の子という名称は、小さな白
い粒を隆起させて染めた絞り模様が、子鹿の背の斑点に似ているところか
ら出た。縮緬の白生地を小さな粒ごとに、一つずつ丹念に指先で折り、
糸を巻いて括っていく。これを染めたあと、糸を解くが、総絞りでは一
反に約六万粒もある。この小さな絞り目で、花鳥や波などの模様を点線で
状にあらわす。